日々是憂日

日々是好日ー人生は好い日ばかりがつづいているかな?をちょっと逆転してみると見えてくる日々のことを綴る

多賀城

老婆がまだ

青春期にあった

ころ

東北の旅を

続けていた

ことがありました。

もう真っ暗に

なった

列車の外

とまった駅の

名が

多賀城

でした。

「あ、多賀城!」

わたしはつい

大きな声を

あげました。

わたしの前の

座席には

東北大学

学生らしい

若者たちが

並んで座り

ベートーベンの

フィデリオ

話を

情熱的に

話し合って

いました。

でも

わたしが思わず

「あ、多賀城!」と

叫んだので

彼らはなぜか

黙ってしまいました。

リュックを背負った

妙な女の子が

一人

旅をしていて

突然

彼らにとっては

日常の地名を

感動のあまり

叫んだのを

奇としたに

違いありません。

あの学生たちも

いまは

超高齢者で

どこかの

施設にでも

入っているのでしょうか、

それとも

元気で

奥さんと

フィデリオ

聴いて

いるのでしょうか。