日々是憂日

日々是好日ー人生は好い日ばかりがつづいているかな?をちょっと逆転してみると見えてくる日々のことを綴る

京都ばなし(その5)

昔々の話です

京都は百万遍

通りに面して

琥珀」という

茶店がありました。

ある晩

夜を徹して

ベートーベン交響曲

全曲通して

やるということが

ありました。

二階のその部屋は

学生たちでいっぱいで

私はすみっこにひっそり

すわっておりました。

ベートーベン全曲・・・

ついに

第九まできました。

「合唱」の直前になって

私はふっと店を出たのです

ちょうど

夜明けの薄明かりが

百万遍

ただよっていました。

私は大文字山

いつもの道を登り

そこから山を越え

琵琶湖のほとりまで

歩いたのでした。

わけもなく

泣きながら。

19歳のあの年は

哀しいものですね。

あの夜と

夜明けの思い出

それは

琥珀

たった一杯の

コーヒーで

始まったこと

なのでした。